(3)身の回りからの素材調達
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松本の平らは四方を山で囲まれ、ちょっと山に入ればいくらでも木がある、全国でも有数の松の産地 です。植林をしなくとも、放っていても松に覆われてしまうくらい、松が生息しやすい土壌をもってい ます。植林をした松はグニャグニャ曲がって使い物になりませんが、天然に育った松は案外真っ直ぐと 立って、建築物にも使えます。三郷にある県の材木市場は、日本ではおそらく一番の松の市場でしょ う。そのくらい、前を見ても、後ろを見ても、木材には事欠かない土地です。 しかし国産材は低迷の傾向にあります。なぜその国産材を使わないのでしょうか。材木には戦後まも なくから、「一面無地」「二面無地」「上小節」「特一」といった等級が、商人によって勝手に付けら た経緯があります。これは大手商社などが扱いやすいように、選別しやすいようにです。節がある、な いによって、構造上問題があるわけではありません。問題があるとしたら、見た目に節が多いと、人か ら「これは安いな」と言われることくらいでしょうか…。 何年も経って自然に黒くなれば、無地であろうが節であろうが、それは一つの景色となるし、場所に よっては節のあるものの方がいい場合もあります。たとえば濡れ縁をつくるとき、節のある材料とない 材料があったとします。何もないところに川が流れていれば単調ですが、その中に二つ三つ石があれ ば、自然に流れは石に当たり波が起こります。それによって「景色」が生まれます。それと同じよう に、節は「景色」になります。そのような美しさも、必ずあるはずです。 かつての家づくりは、近辺から材を調達していました。私が見た100年以上前の古い家では、取り壊 したときに、屋根束に庭木の梅の木を使っていました。昔の家は火災にあっても、黒こげになっている 表面を手斧ではつって細い柱に使ったり、根太に入れたり、束に使ったり、大事にしたものです。今は 断熱材、コンクリート、金網などがついて、「始末が悪いからそのまま燃やしてしまえ」といった具合 で、廃棄処分せざるを得ません。その中に塩化ビニール系のものや、石油系のものがあればダイオキシ ンなどの有毒ガスが発生します。 長野県では戦後まもなくカラマツの植林を奨励しました。クヌギやナラやクリがたくさんあった山や 雑木林を全部切り倒し、カラマツに植え替えてしまいました。カラマツの足場丸太など、戦後復興の建 設ラッシュで高値で売れたから、当時はそれで良かったかもしれません。 カラマツそのものはねじれも多いし、脂もでます。大変扱いづらいですが、70,80年生くらいにな ると、悪くない材料です。赤みを帯びた景色のいい、また若々しい感覚のある材料になります。強度的 に問題のある材料でもありません。 県では今、補助をどんどん入れて、躍起になってカラマツの間伐材を大断面の集成材につくっていま す。それをつくるには、サイコロをたくさんつくって、工業的な接着剤で貼り合わせ、それを成型して 10メートル15メートルの大断面にします。これは確かにドームなど大きな建造物に使うには合理的か もしれませんが、住宅にはちょっと疑問です。むしろねじれて割れていても、その割れたもの一本でつ くった方がいい。要はコストがかからずに、割れないようにするにはどうしたらいいか、考えればいい のです。 今若い人で、二間続きで大きなケヤキの柱を建てたい、と望んでいる人はいないでしょう。かといっ て、パステルカラーのメーカーハウスも必要ありません。若い家族4人が生活していくためには、せい ぜい25坪から30坪くらいあれば十分間に合います。ましてや余計な間仕切りやメーカーの既製品が少 なければ、価格も抑えられる。そういう一つの柱を立てて開発していけば、長野県内にカラマツとアカ マツだけで何千棟、何万棟つくっても足りるくらいの材料はあります。それをうまく使い分けていけ ば、空気の通う家ができるのではないでしょうか。 |